【卒業生インタビュー】環境問題に挑んだ40歳のキャリアシフト― GOALでの世代を超えた議論が、人生を動かした

石田さんのGOAL体験談

以前から環境問題、特にごみ問題に強い興味を持っていた石田さんは、2023年にGOALプログラムのことを知り、その当時ご家族と住んでいたタイからオンラインで参加してくださいました。GOALをきっかけに自分の考えに自信を持ち始め、行動しているうちに40歳という節目であれよあれよと人生が大転換したそうです。そんな石田さんにお話を伺いました。

自己紹介

「今は、富山を本社とする株式会社リョーシンで廃棄物処理プラントの販売営業をしています。趣味はストリートダンスで、あとはファスティングを年1回6日間必ずやっています。
家族構成はタイ人の妻と5歳の日泰ハーフの息子がいます。今年で40歳になりました。GOALと、今年5月からの本帰国で人生が大転換しました。まだまだこれから伸びて行きます!富山の暮らしも控えめに言って天国です。来客が少ない観光地に定住しているような気分です。車で30分以内の場所に天国が広がっています。」

今のお仕事に就いた経緯

「日本の大学を卒業した後、タイの大学院に進学して2年程度学生生活をしており、そのあとタイ国内で様々な仕事に従事しておりましたが、直近3年半程は不動産賃貸の営業をしていました。

もともと環境問題への思いが捨て切れず、だけど(ごみ問題関係の)転職のプランも無く、けど何かしたいと思い、たまたま目にした「ごみの学校」というFacebookの環境問題関連のグループに何となく参加しました。そこでGOALの募集投稿を見つけました。

リサイクルってどうしても慈善事業のイメージがあるじゃないですか。よもや仕事としてリサイクルだったり廃棄物の問題に取り組むっていうイメージがなかったから、「こういうこと真剣に議論したり仕事にすることって難しいのかな」って思ってたところで、GOALのみなさんがあんなに真剣に英語で議論していたから、探せばちゃんと仕事になるような種があるかもしれないって、だんだん手ごたえを感じたんです。その手ごたえがなかったら、その業界に転職しようなんて発想には至らなかったです。自分にも出来るかもしれないとGOALで皆さんに自信を頂きました。

その後、いろいろ相談していた大学のOBさんにたまたま誘われたタイの廃棄物事業の展示会に行きました。そこで以前YouTubeで気になっていた会社が展示していて、それが今のリョーシンだったんです。その話した相手がタイ支社の代表で、話していく内に日本国内の本社で勤務することにしましょうかということになりました。

採用が正式に決まってから三か月間で前職を退職して、息子の幼稚園を出て、新居を見つけて、住んでいたところを引き払って、引っ越ししてを全部やったんですよ。ものすごく大変でした(笑)。本帰国はもう人生最大の決断でした。自分が家族を連れてタイを離れるイメージなんてありませんでしたから。

40歳で今まで関わったことが全然ない仕事に入っていって、ちゃんとやっていけるかなという不安はありました。妻子も富山の生活になじめるかなとすごく不安だったんですけども、ふたを開けてみたらそれに関するトラブルは一切なかったですね。ほんとに会社の方たちも生活のことやらなにやらすごく助けてくれました。」

富山は天国

「富山は海と山が両方ある県なんですよね。特に海に関しては氷見市の雨晴海岸から松が見えて海が見えて、そこから山が見えるんですけど、すごくいい所です。あとはですね、立山連峰の景色が本当に素晴らしいです。職場からも見えるんですが、あれを見るだけで仕事のやる気が湧きます。ご飯も本当においしいですしね。本当に刺身はとてつもなく美味しいです。以前はバンコクに住んでいたんですが家族もタイに戻らなくていいと言っています(笑)」

実際にリサイクル業界に勤めてみて感じる事

「GOALの時は、消費者側と企業側、それぞれの立場になってごみ問題の解決に向けて議論していましたが、実際やっぱり抜本的に解決しようと思ったらその企業の方に働きかけないとどうにもならないです。一緒にGOALに参加されていた方は「法律でどんどん 取り締まったらそれでもう解決に向かうだろう」っておっしゃっていましたが、ある意味それも間違いじゃないんですよ。

例えばヨーロッパでは、プラごみをプラごみとして もう 燃やすのをやめましょうっていう法律が90年代頃にできました。そうするとプラごみをセメント製造用の燃料として使う技術が発達し始めたんですね。それで注目されたのがフラフ燃料です。フラフって2センチ角くらいのプラスチックとか紙ごみを主体として生成した、燃焼効率の高い燃料なんですよ。それぐらい細かく破砕するのって結構な高等技術が必要だから、なかなか良さげな破砕機が必要なんですね。そういう破砕機が作れるのがオーストリアにありますが、そこは破砕機メーカーとしては世界一の売れまくっている大企業です。やっぱり売れまくっている背景にはそういう 法律があるから っていうのは大いにあると思いますね。

 日本では3 R 研究財団というところが(会社がリサイクル設備の導入をする際に)補助金を出してくれます。

この業界に入ってみてすごく思うのは「リサイクルって事業なんだ」っていう実感ですね。リサイクルって個人の家庭で分別しているイメージじゃないですか。だけど本当に事業としてリサイクルをやってる現場って、一般廃棄物とか 産業廃棄物をまとめて処理場に集めてきて、 破砕機、分別機に入れてそこで自動で1時間何十トンくらいのペースで大量のゴミを分別してリサイクルしていくんです。そういうイメージって僕、元々なかったんですよ。リサイクルでよもや金が稼げるなんて発想はないじゃないですか。でももはや日本ではリサイクル業界は今「金の生る木」です。 お金さえあればもう少し大規模なリサイクルプラントを導入したいなっていうリサイクル業者が 今たくさん日本にあるんです。そういう元々のイメージと違うところがすごく面白いですね。」

GOALプログラム中に印象に残っている事

「まずはプログラムも終盤に差し掛かった真っ最中に、今なお続く中東紛争が再燃したこと。まさかあれがここまでになるとは思っていませんでした。(※当時のプログラムではイスラエルサポーターとの議論もありましたが現在はシンガポールとスリランカのみ。)

他にもイスラエル、シンガポール、スリランカ各国の方々がこちらの質問に真剣に回答してくれて、現地の廃棄物の様子を聞けたこと。あと最後のプレゼンに向けて皆さんと準備をしていた時、様々な年齢の方々と準備して刺激を受けたことです。
高校生や大学生とああいう議論って中々難しいんですよ。GOALという場にならないと真剣に議論しようと思わないんですよ。年取った僕らにとっても強い刺激になりました。今の高校生・大学生ってこんなにレベル高いんだとGOALをしている時にずっと思っていました。」

GOALで感じた感覚

「この前たまたまNewsPicsで流れてきた記事、「見知らぬ人と30分間会話する実験が教えてくれること」に政治的・宗教的背景が真逆な人たちをあえて集めて話させた実験の結果が載っていました。被験者たちは最初は気分が悪かったんですけども、最後のアンケートではすごく多幸感を得られたという結果だったんです。その記事で言っていたのは、どうしても僕らって似通った人たちと絡みがちじゃないですか。だけど一歩全然馴染みのない人と話してみると意外と信頼し合えるんだってこととか、何も知らない人と腹を割って話しあうことが楽しいと思えるように人はできているんだ、という結果でした。

その記事に書いてあった感覚というのが、まさに僕がGOALに参加した時に抱いていた気持ちそのまんまだったんですよ。年齢も背景も全然違う人たちが集まって、同じトピックで真剣に頭ひねってアイデア出して話し合ってという空間は本当に特殊だったと思います。お互いをオープンにして話し合うって清々しいんですよね。終わりに差し掛かるともう終わっちゃうのか、この人たちと対面で飲みたいなという気持ちになっちゃいました。」

改めてGOALを振り返って

「2025年になってこれだけオンラインで日本が世界中とつながっていてもGOALのようなプログラムってありそうでないんですよね。老若男女誰でもOK、年齢バラバラの人が一緒に並びで集まってあれだけ真剣に話し合うというのはどの年齢層にあっても益にしかならないですよ。
今って他人との距離が遠くなっているじゃないですか。直接話す難易度が異様に高くなってきていますからね。それでいてGOALのような空気感を無料で体験できるってすごいと思います。

あとやっぱり一人で考えてるだけだと、自分が夢想しているだけなのか、それとも具体的にプランを練っているのかわからない時があるんですよね。でもそのことについて複数の人と話すと、突然手ごたえを感じてくるんです。一人で何となく思っていることを話したら、相手が自分が思いもよらないフィードバックを言ったりするわけですよ。そこから急に、自分が何となく夢想していることも実は現実的だったんだって気づくんです。

実際、色々調べたり作ったりと中々しんどかったです。なかなかタフです。でも改めて参加してみてよかったです。今思いかえすと4日間とは思えない手ごたえでした。」

今後の石田さんの挑戦したいことや、描いているビジョン

「今の職場では廃棄物処理をする様々な機械を扱っていますが、自分でも世界トップクラスの水準の未知の機械を見つけてお客さんに提案してみたいです。

あとはまだ再利用の術が無い廃棄物の再利用方法を少しでも多く提案したいですね。現在廃プラや紙、繊維質のゴミを破砕したフラフという燃料が注目されていますが、是非これを石油に代わる燃料にするよう働きかけたいと思っています。またこういう今の仕事の内容をSNSで発信して行くようにしたいです。」

歯科医である石田さんのお父様が叙勲受賞された時の祝賀会でパシャリ。石田さんは祖父から続く歯科医の家系ですが、環境問題への気持ちを抑えきれず別の道へ進んだそうです。

GOALに参加を検討している方へのメッセージ

「自分にはとても無理だと思えることをやりたい時、まず簡単に始められる1歩を踏み出すことが後にどれ程大きな転換のきっかけになるか、そしてGOALは充分にその一歩になり得ることを、身を以て体験しました。
GOALに少しでも興味があれば、迷ってるうちに是非参加ボタンをポチってみて下さい!」

インタビューを終えて

当時、お仕事や育児でお忙しいにもかかわらずご参加いただいた石田さん。学びたい意欲がとても高く、他の参加者もそれに引っ張られるように楽しそうに議論が盛り上がっていたのを覚えています。
石田さんのごみ問題に対する強い情熱が、現在のお仕事への縁を引き寄せたのだなと思いますが、GOALがそのきっかけの一部になれたことを大変光栄に思いました。

最近は高校生の参加が増えていますが、世代を超えてSDGsを語り合える貴重な場です。社会人の皆さんにも、ぜひ気軽にご参加いただけたら嬉しいです。
「えいっ!」と石田さんのように一歩踏み出せば、新しい世界が広がるかもしれません。


2025年11月
アレックスソリューションズ
海外研修事業部 池田